サウンディング
制作:日本基礎技術

サウンディングとは
 斜面対策を計画・設計する上で、地盤の性状や地盤定数の把握、推定は非常に重要な基礎資料となる。特に、斜面崩壊を来す恐れがある土質地質の性質や規模の把握やその強度的特性の把握は、対策工検討における主要ファクターであり、現地調査などによってこれら情報の精度が向上し,信頼度の高い対策工設計に大きく影響を及ぼす。
このような地盤特性の把握には、サンプリングした現地の土での室内試験で得る方法と、現位置でサウンディング等を実施して求める方法がある。
サウンディングは、直接コーンなどを対象地盤に貫入して貫入抵抗を求める手法であり、原位置の拘束圧の下で試験が実施できる点が最大の長所である。

 サウンディングの分類
サウンディングは、測定・操作上から静的サウンディング(Static Sounding)と動的サウンディング(Dynamic Sounding)に大別される(下表参照)。前者は抵抗体を地盤中に一定速度で貫入、膨張あるいは回転した時の抵抗などを測定する。一方、後者はドロップハンマーなどによって抵抗体を地盤中に打ち込み、一定量貫入させるために必要な打撃回数を測定する。

表−1 サウンディングの分類

(出典:地盤調査の方法と解説((社)地盤工学会,H16.6),p.244

 静的サウンディングの代表的試験は、スウェーデン式サウンディング、ポータブルコーン貫入試験(コーンペネトロメータ)、オランダ式二重管コーン貫入試験などがある。動的サウンディングは、標準貫入試験、簡易貫入試験(簡易動的コーン貫入試験))が代表的である。

各種試験の構造概要
各サウンディング試験の概念図を以下に示す。標準貫入試験については別項を参照されたい。

サウンディングの特徴
各サウンディング試験は、それぞれ独自の特徴を有しており、適用する地盤や目的によって最も適合した種類のサウンディングを経済性も考慮して提案、採用する必要がある。
サウンディング方法の特徴及び適用地盤を下表に示す。

表−2 サウンディング方法の特徴及び適用地盤


試験方法の概要と斜面調査での適用例
@ スウェーデン式サウンディング
本試験は、おもりの載荷による静的な貫入に必要な最低荷重(Wsw)と、1000Nの静荷重条件下での回転にる貫入抵抗値(Nsw)を求める試験である。
元来、路盤支持力の調査を目的として開発されたものであるが、静的サウンディングの中では対象地盤の制約が少なく、かつ、15m程度までの測定が可能であること、試験装置が人力運搬可能な規模に分解・独立していること、などから、斜面調査においても実施される例が多い。主に、表土層や崩積土層とその下層の境界深度の把握や、崩壊土中の不連続面を調べるのに有効である。

 Aポータブルコーン貫入試験(コーンペネトロメータ)
本試験は、貫入体(コーン)を人力により1(cm/s)程度で静的に貫入する際の抵抗力(コーン貫入抵抗,qc)を貫入量10cmごとに求める試験である。
本試験は軟弱地盤のトラフィカビリティーを判定する目的で開発されたものであるため、粘性土や腐植土が対象地盤であり、その適用領域は人力にて貫入できる範囲に限定されるが、非常に簡便な設備で実施できることから、斜面調査においては、表土層の強さ、厚さ及び表土層とその下部地盤の境界を求めるのに利用される

Bオランダ式二重管コーン貫入試験
本試験は、ポータブルコーン貫入試験を原型とし、ロッドの周面摩擦を分離しコーン貫入抵抗のみが測定されるよう二重管構造で構成される。ロッド内管に接続された貫入体(マントルコーン)を1(cm/s)程度で静的に貫入する際の抵抗力(コーン貫入抵抗,qc)を貫入量5cmごとに求める試験である。
 5m程度の深度まで測定が可能であるが、他のサウンディングに比して装置設備が大きく、装置を水平に固定する必要があり、対象地盤のみならず、地形的制約を受けるため、提案、採用にあたっては現地適応性を十分検討する必要がある。
 砂地盤であれば測定データから杭基礎の支持力や直接基礎の沈下が解析可能で、斜面調査においては構造物計画地点の地盤評価に利用される例がある。

C簡易動的コーン貫入試験
 本試験は、装置や方法は標準貫入試験を小型化したものとして表現される。質量5kg(±0.05kg)のドライブハンマーを高さ500mm(±10mm)の高さから自由落下させ、コーンを100mm貫入させるのに要する打撃回数(Nd値)を求める試験である。
 試験装置が総重量15kg程度と軽量で、かつ、携帯性に優れている。また、標準貫入試験に比して打撃エネルギーが小さいため、玉石や礫を多く含む地盤には不向きであるものの、対象地盤の制約も小さい。ロッドが単管式のため、一般に地盤表層部3m程度以内が適用深度といわれている。
 試験作業が単純かつ簡便であることから、短時間に多くの測点での調査が可能であることから、急傾斜斜面などにおける表層土の調査や斜面崩壊地での風化層や崩積土層厚確認の面的把握に多用されている。
斜面性状の詳細把握は測点間隔に依存するため、調査計画においては慎重に検討する必要がある。

 利用上の留意点
 斜面調査においては、測定簡便性や経済性から、主に貫入抵抗の相対的な強度差に着目した土質境界分布の面的概略把握に多用されているが、サウンディングのみでは地盤性状の詳細が確認できないことが多い。そのため、試験の位置づけとしては、調査ボーリングや標準貫入試験などの補足資料として利用することが望ましい。
 サウンディング試験で得られた測定値から、対象地盤の地盤定数を求めることも可能であり、近年では算定式がサウンディングごとに複数提案されている。しかし、いずれの算定式も、理想的にモデル化した地盤条件や境界条件による理論式であったり、測定事例を基にした経験式であるため、提案されている算定式の対象斜面への適用に際しては、調査ボーリングや標準貫入試験など、他の試験や計測結果を含め、総合的に吟味、検討の上、利用することが肝要である。