都道府県名 沖縄県 面積 2,282km2 人口 185万人
地形

沖縄県は、日本列島の西南部に位置し、九州と台湾の間に弓なりに連なる琉球弧に属している。北緯26度、東経127度を中心として南北400km、東西1,000kmにもおよぶ広大な海域を有し、沖縄諸島、先島諸島、大東諸島などの大小の島々から構成される。

島の数は、有人島47、無人島113(0.01km2以上の島)で、総面積は2,282km2、全国第44位である。

島を大きく区分すると、沖縄群島、宮古群島、八重山群島の3つに大別される。地形は主に2つのタイプに分けられる。沖縄本島南部、及び宮古島、南北大東島のように隆起サンゴ礁、第三系からなる平坦、なだらかな丘陵地地形と、沖縄本島北部および、石垣島、西表島、与那国島などのように古生層からなる急峻な山地型の地形である。

地質

図−1に沖縄県の地質図を示す。

沖縄県は、地質構造上から3つに区分され、琉球弧東側の本島中南部・宮古島は第三紀を中心とした新生代の地層、琉球弧中心の本島北部・石垣島は古生代〜中生代の地層、さらに、琉球弧西側の久米島が新生代後期の火山帯から構成される。

新生代の第三紀から第四紀にかけての地層は、島尻泥岩と琉球石灰岩が特徴的である。

島尻泥岩は風化に対する抵抗力が弱く、軟質化、土壌化し易い。沖縄地方の方言では、島尻泥岩を“クチャ”、褐色に土壌化したものを“じゃーがる”と呼んでいる。琉球石灰岩は、戦後、“コーラルリーフロック”と呼ばれ道路の敷石や、骨材などの建設材料として用いられてきた。

沖縄本島の北部に分布する古生代〜中生代の地層は、千枚岩、緑色岩などを含む国頭層群が知られている。岩質自体は新しい時代の地層より硬質であるが、変成作用を被っており、片理、節理面などの分離面が発達している。この地層が風化して褐色土壌化したものが“国頭まあじ”と呼ばれている。

気象

図−2に沖縄県の気候を示す。

沖縄県の気象は、熱帯と温帯の中間である亜熱帯に位置し東アジア季節風に属していて夏は南東風、冬は北と北東風が卓越している。また、沖縄は古来より台風銀座とよばれるように台風進路の転向点にあたるため、台風の影響を受けることが多い。

黒潮の関係で冬期でも暖かく、年間を通しても気温の変化は少ない。那覇市における月平均最低気温が16℃以上であり、年平均気温は22℃である。冬期でも10℃以下に下がるのはめったになく、しのぎよい気象条件を呈している。

降水量をみると概ね年間2,000o前後の雨があって年によりその差異が甚だしい。また、島が細長いので場所によって降雨量はかなり異なり干ばつを受けやすい。

その他特徴

戦前本県では、内務省所管の砂防法に基づく砂防事業は行われていなかった。当時、制度上改正を行わなければ砂防事業が実施できないなどの理由があり、事業着手に至っていない。

戦後、琉球政府時代には、度重なる台風被害を受け、特に昭和34(1959)年のシャーロット台風による崖崩れ、土石流、地すべりなどのために死者46名、全半壊家屋1,258戸、道路損壊77箇所などの甚大な被害を被った。これにより、根本的な治山治水事業の必要性を改めて認識し、数回にわたる調査及び技術指導が行われ、砂防ダム建設が始まった。

昭和47年の本土復帰以降は、全国と同様に砂防関係法の適用を受け、また、同時に沖縄振興開発特別措置法に基づき補助により砂防事業の促進が図られている。

地すべり分布と特徴

図−3に沖縄県の土砂災害危険箇所図を示す。

沖縄県の土砂災害危険箇所(土石流危険渓流・地すべり危険箇所・急傾斜地崩壊危険箇所)は、1,032箇所(令和4年10月現在)である。

本県は急峻な地形、地質の脆弱さに加えて台風の常襲地帯である。地質的には、島尻泥岩(クチャ)などの特殊な地盤、土壌が覆っており、併せて戦後の開発や台風襲来に起因した山地崩壊の進行、また梅雨時の集中豪雨による土砂災害が発生して地域住民にとって、重大な脅威となっている。

地すべり地は,「クチャ」と呼ばれる島尻泥岩が広がる沖縄本島中南部にその多くが分布しており、県内の88(約4.854ha)の地すべり危険箇所の多くが当該地域に位置している。

対策事業の実施状況

沖縄県での地すべり対策事業は昭和47年(1972年)より開始されている。

沖縄県では31箇所の地すべり防止区域が指定され、整備工事が順次進められており、平成14年度末までに16地区で工事が終了している。

土砂災害の自然災害から県民の生命、財産を守り、快適で潤いのある住み良い県土を建設するために、砂防、地すべり対策、急傾斜地崩壊対策の各事業を鋭意推進している状況である。

平成30年8月現在の県の地すべり防止区域は下表の通りである(Vol.45,No.2(2018年8月,通巻133号))。

所管 箇所数 区域面積(ha)
国土交通省

31

不明

農村振興局

2

78.63

林 野 庁

0

0

合  計

24

(農村振興局は令和5年4月21日現在)

掲載号(「斜面防災技術」に紹介された地すべり地)

Vol.29,No.3(2003年3月,通巻87号):(国土交通省所管)仲順地すべり

Vol.32,No.1(2005年7月,通巻94号)座談会:九州支部の活動状況と新時代の運営

Vol.36,No.2(2009年11月,通巻107号)講座:地すべりの調査・解析・評価における課題と解決(沖縄,島尻層群泥岩分布地域の地すべりを事例として)(その1)

Vol.36,No.3(2010年3月,通巻108号)講座:地すべりの調査・解析・評価における課題と解決(沖縄,島尻層群泥岩分布地域の地すべりを事例として)(その2)

Vol.37,No.2(2010年11月,通巻110号)講座:地すべりの調査・解析・評価における課題と解決(沖縄,島尻層群泥岩分布地域の地すべりを事例として)(その3)

Vol.45,No.2(2018年8月,通巻133号)座談会:九州支部の活動状況と運営方針

参考文献

おきなわの砂防  沖縄県土木建築部河川課

九州沖縄における特殊土 (社)土質工学会九州支部

平成11年度支部総会・学術講演会 講演論文集 地すべり学会九州支部