火山岩岩石の露頭の見方 新潟大学理学部 山岸 宏光 ◇まえがき
地すべり対策協会から、火山岩の見方をホームページに掲載したいので書いてほしいとの依頼があったので以下に述べてみたい。 溶岩・岩脈の露頭観察
◇火山岩の見方 火山岩の露頭を観察するには以下の点が重要である。
◇以上を判断するためのポイント 1) 形成時にできた構造か、後世的な構造か 2) 溶岩の場合には、その末端、上端、側端はアア状か水冷破砕か 3) 割れ目は規則的か、不規則か、直線的か曲線的か 4) 火砕岩は同質(monolithologic)か、異質(heterolithologic)か 5) 火砕岩の角礫と基地との比率はどうか 6) 角礫と基地は同一か異質か 7) 異質の場合:基地に発泡した破片(スコリア、軽石)などが入るか 8) 大きな破片に火山弾やスパッターなど特有の構造をもつものがあるか 9) 同質の場合:自破砕溶岩(定位置破砕か)、自破砕岩(再移動ハイアロクラスタイト)か 10) ハイアロクラスタイトに連続する溶岩体やフィダーダイクは確認できるか ◇火山岩の岩相
◇火砕岩 火砕岩とは、角礫状になったものの総称である。径数cmから数10cmの角礫とそれを充填する基地からなることが多い。 角礫岩片の見方は、溶岩・岩脈と同様であるが、基地との関係が問題。 角礫と基地は同じ色か。異なる色(たとえば角礫が黒く、基地が黄色でも、同じ場合がある)でも、それは基地がよりガラス質のため風化・変質を強く受けているため。このようなものは、溶岩や岩脈が水底など水の多い環境で噴出して、水冷破砕を受けたものである。 図―4 同岩質の一定位置ハイアロクラスタイト (佐渡小木海岸の玄武岩) また、角礫と基地が異なる火砕岩の場合に、基地の破片にはより気泡の多い軽石やスコリアなどの破片が入っていると、爆発的な作用、降下あるいは火砕流による流動したものかのどちらかである。 火砕岩には、塊状のものと層状のものがある。塊状のものは、水冷破砕されたままの状態で(図―4)、層状の場合はハイアロクラスタイトの二次流動堆積物(図―5)と降下堆積物のフォールユニットあるいは流動堆積物のフローユニットと考えられる(図―6、7、8)。 図―5 同岩質の角礫からなるハイアロクラスタイトで層状のもの。 ユニット内で上部に粗い粒子が多くなる(逆級化構造)。 図−6 下部が降下軽石層、上部が火砕流堆積物(樽前山山麓) 火砕岩で層理のあるものでは、粒が揃っているか(淘汰がよいという)、不揃いか。細粒部分が欠けている場合は、降下したものが多い(図―6)。その場合には層厚が一定しているが、流動したものは不揃いで、層傾斜が急で厚さも横方向に変化する。たとえば、スコリアが降下してできた斜面が崩れて、崖錐を形成したものでは、降下した堆積物の厚さは変わらないのに、崖錐は下方に向かって厚くなり粗くなる(図―7)。また、降下と流動の中間的なものにサージ堆積というものがある(図―8)。 図―7 下部はスコリア降下堆積物、中間部は崖錐堆積物 (サントリーニ島の玄武岩質火砕物) 図―8 上部の層理のある部分がサージ堆積物(玄武岩質火砕物)、 下部の粗粒な部分は火砕流堆積物(北海道登別) 陸上で形成された火砕岩に、溶結凝灰岩とよぶ軟岩がある。これは溶岩同様に柱状節理が発達する。これは、火口から噴出し、付近に降下した火砕物や火砕流が500度以上の高温のため、定着後にも熱を保ち、軽石などが自重で潰れてコンパクトになり、その後ゆっくり冷えるためである(図―9)。 図―9 溶結して柱状節理の発達した安山岩質降下軽石火砕物 (北海道駒ケ岳山頂火口) ◇あとがき 火山岩の露頭観察の初歩的な見方を簡単に紹介してみたが、実際の観察の際には目的もはっきりしている必要がある。つまり、火山地質か、斜面地質か、土木地質かにより、同じ火山岩でも目の付けどころは異なっていいであろう。つまり、火山地質であればその成因が問われ、斜面地質や土木地質であれば、硬さ、割れ目、透水性などが問題になる。いずれにしても、火山岩に限らず地質露頭の見方に習熟するには、ある程度の経験が必要であることはいうまでもないので、以上のポイントを参考に経験を積むことが期待される。 |